野田新五 noda shingo


 

●著者略歴

昭和23年(1948年)東京生まれ。詩誌「地平線」所属。日本詩人クラブ会員。

●『月虹』あとがきより

 勤め人の生活も今年で四十年目。現在は集合住宅の管理人をやっている。この間、孤独に詩を書いていた私が山内邦男氏の推薦で詩誌「地平線」同人となったのが一九九一年。早いものでそれから二十三年である。
 日常の時間に身をゆだねる心地よさをあえて拒み、流れに石を置くがごとく詩を書く理由はこの歳になってもよくわからない。けれども、だからこそ飽きずに続けてこられたのだと思う。ときどき、気まぐれな詩の女神が降りてきて、詩を書かせてくれた。その出来はともかく、非才の身には有り難いことである。
 この詩集は、「地平線」に発表したものを中心に、他誌に掲載された作品と未発表作を加えた。私にとって初めての詩集である。
 表紙の絵は清宮質文氏の木版画である。一九八八年の秋、「木版画の詩人」と呼ばれる版画家、清宮氏のアトリエを訪問した。真の芸術家がこの世に実在することに私は驚き、その静謐で真摯な人柄にたちまち魅了された。以来、今日まで画家への敬愛は変わることがない。