山川純子 yamakawa junko


 

●著者略歴

1950年 北海道大空町東藻琴生まれ
1990年 「花林」短歌会入会
2000年 同人誌「ぱにあ」参加

著書
1999年 歌集『春の水かさ』
2003年 歌集『凍天の牛』
2008年 歌書『海よ聞かせて』─中城ふみ子の母性愛─
2012年 歌書『自分の言葉に嘘はなけれど』─石川啄木の家族愛─

他に
2006年 東藻琴村開拓百年記念碑に短歌一首
2016年 オホーツク大空町イメージソング「風は友だち」作詞

 

●「あとがき」より

いつものように窓の外を眺めながら食器を洗っていると二羽の鴉が畑の縁の枯れ草の中に降り立ち、嘴で枯れ草を浮かせていた。浮かされた草は忽ち乾き、風に揺らされはじめた。二羽はそれを集めるようにしてくわえ、飛び去った。巣作りの時期である。あの草の上で卵を温め、雛が育っていくのだろうと思うと、ほのぼのと暖かい気持ちになる。コロナ禍で右往左往している私たちを余所に自然界は春である。
さて、短歌を学び始めたのは平成元年の春。いつの間にか三〇年を超えた。この間に二冊の歌集と、その後歌文集二冊をまとめ、今回は一八年ぶり三冊目の歌集になる。七〇歳という区切りもだが、子供を亡くした悲しみの中、孫の傍らで成長を目の当たりにしながら詠み溜めた作品を確かな形にしておく事が、何よりの目的である。テーブルの下をくぐって歩き、座っていると膝に来て腰掛ていたのが小学の最終学年となった。変声期のさなか、身長も家族で一番に。百年先の先まで平和であることを願わずにはおれない。